No.3 キャンプ時の栄養士の仕事とは(その2)

今回は、前回に引き続き、キャンプ中の栄養サポートについて紹介していきます。

キャンプはプロサッカーチームの場合、シーズン前(2月)は2週間〜3週間、シーズン中(リーグ中断など)3日〜10日間行います。
気候のためキャンプ期間が長いチーム、ゲーム状況によってシーズン中に予定外にキャンプを行うチームなどもありますが、基本的には年2回行うチームがほとんどです。

どんな栄養サポートをするか。
選手の栄養の知識の有無・サプリメント使用状況・コーチングスタッフの意識・・・などを考慮して、どういう角度で指導していくか、テーマを決めます。
ですから、チームが異なれば指導方法も変わりますし、また同じチームであっても知識のある選手が増えてくれば、また違った指導をしていくわけです。

とにかく3食チェックできるキャンプは、栄養指導をするのに良い時期。
選手の意識・知識をもたせることは重要ですが、それ意外にも選手の食事の傾向やトレーニングによる体重変動など、1年間栄養サポートするのに役立つ情報を得る良い機会でもあります。

キャンプ中の管理栄養士の必要性

キャンプ中の食事はビュッフェスタイル。

ビュッフェスタイルの利点は、トレーニング強度・怪我などによって、食事を調整できることです。
でも逆に、的確な指導がなければ、選手は「好きなもの」だけ食べる傾向もありうるわけです。
また、選手自身が何を食べればよいのか、どのくらい食べれば良いのか、と思ったときに、やはり栄養指導できるスタッフがチームにいることは大切です。

コーチやトレーナーで栄養を勉強されている方もたくさんいらっしゃいますが、
「この食事のエネルギーがどのくらい?」
「この食品にカルシウムがどのくらい含まれている?」
「吸収の悪いカルシウムはどんな食品と一緒に食べれば吸収がよくなるのか?」
「牛肉が食べれない選手は何をかわりに食べればいいのか?」
・・・といった細かい質問に答えることはできないと思います。
やはりそれができるのは、「管理栄養士」です。

ビュッフェスタイルの食事指導

「朝食」「昼食」「夕食」「夜食」、場合によっては「軽食」をコントロールします。

1日にとるエネルギーを設定し、それからPFCバランス(たんぱく質・炭水化物・脂質の割合)を決めます。
トレーニングマッチの時は別として、キャンプは「身体を作り」が目的。
必然的に「たんぱく質」を多くとらせるように指導していきます。

それぞれの食事でやることは、「サンプルメニュー」の作成。

トレーニング内容・強度で選手のエネルギー消費量は変わってくるので、それを考慮して「サンプルメニュー」をつくります。
ビュッフェスタイルですから、サラダも数種類、メイン料理は肉料理・魚料理・卵料理・・・、お惣菜やフルーツも数多く並んでいます。
そのメニューから、必要な食品・量を選び、実際に皿に盛り付けるのが「サンプルメニュー」です。

たいていこの「サンプルメニュー」をみた選手の一声は「え〜こんなに食うの?」です。

そう、量をあまり食べない選手が多いのです。

またサラダはメイン料理に添える程度しか食べていない選手が多いので、一皿にサラダだけ盛り付けたりすることにも抵抗を感じるようです。
それから大皿にメイン料理をあれもこれも・・・と一皿にまとめる傾向もあるので、小皿にそれぞれ盛り付けると皿数で量が多く感じるらしく、それでも抵抗を感じたり・・・
量は増えていないのに、皿の使い方でも抵抗を感じる選手が多いです。

また栄養指導をプロになるまで受けていない選手も意外に多いように思います。
そういう選手は栄養士が何をするスタッフなのかわからず、もちろん最初は何も聞いてきません。
それから移籍した選手で、今までいたチームに栄養士がいて指導されてきたのにもかかわらず、偏った食事をしているのに「自分はこれでずっとやってきたから」と言う頑固な(!)選手もいます。
こういった選手は栄養士に対して偏見をもっていることも多いので、意識をかえることは結構大変です。
でもいえることは、その選手もプロ!
自分のパフォーマンスが向上するにはどうしたらよいか、親身になって的確に指導すれば頑固な姿勢も変わってきます。

とにかくいろんなタイプの選手がいますが、まずやることは食事のたびに基本となる「サンプルメニュー」を作ること。
それをもとに食事をとるように指示することからはじめます。

選手個々に対しての食事指導

実際に選手がとった食事をチェックしていきます。

朝食朝食2朝食3

まず選手に食事をとらせて、それから不足しているものを教えたり、実際にとってきて加えたりしていきます。

「いつも朝食でフルーツはとらない」、「朝食は菓子パン2個程度」、「食べない」・・・という選手の話を聞きながら、いきなりではなく、選手の食欲・反応をみながら、指導をすすめていきます。

きちんととれている選手に関しては、私のサンプルメニューだけでなく、その選手の取り方をまねするように若手選手に指示することもあります。
チームは競争ですから、若手はその選手がゲームのスタメンメンバーで身体もしっかりしているとなれば、いやでも意識して食事をとるようになります。

それから主食を「パン」にするのか、「ごはん」にするのか、それとも「コーンフレーク」にするかで、主菜(おかず)が変わってきます。
主食をどれにするかで、「和食」か「洋食」かになりますが、基本的に洋食の方が少ない量でエネルギーがとれます。
ですから、朝食は食欲がない場合が多いのですが、「選手にどっちがいいか?」ときかれれば洋食をすすめるようにしています。
トレーニング前の朝食でエネルギーを確保することは大切です。

ちなみに、
ごはん1膳(大きな茶碗大盛)と食パン(6枚切り)2枚にバター・はちみつを塗ったものが同じエネルギーになります。

サプリメントの指示

あらゆるメーカーから、たくさんの種類のサプリメントが発売されています。
ビタミンC、ビタミンB1、カルシウム、鉄、アミノ酸(総合・グルタミン・BCAA・・・)。プロテインだけでも、たくさん種類があります。

チームにスポンサーがついている場合はその商品を使うことが前提です。
チームにスポンサーがついていない場合でも、キャンプ時のみチームでサプリメントを用意することもあります。

まずこれまで選手が使っているサプリメントの種類・頻度を把握します。
「こういうのに頼りたくないから」と全く使用しない選手もいれば、たくさんの種類のサプリメントを毎食食事のようにとる選手もいます。
でもこういう選手は、理解して使っているかといえばそうでもなく、良いときくと購入してしまう傾向があったり。

食事で栄養をとることが基本で、サプリメントはあくまでも補助。
一生サプリメントだけで生きることはできませんから、そこから話していき、その選手が本当に必要なものだけをとらせるようにしていきます。
トレーニング強度で異なる場合もありますが、基本サプリメントを指示することもキャンプ中の管理栄養士の仕事です。

それとキャンプ中の食事傾向を把握すれば、日常の食事でその選手がどういう栄養素が不足しがちかがだいたいわかりますので、キャンプが終わってからのサプリメントのとり方もそこでの情報をもとにすすめたりもします。

それ以外にも・・・

キャンプではこういった食事やサプリメントの指導もそうですが、フォークとナイフの使い方といったテーブルマナーも意識させます。
とった食事は残さないことは当たり前ですが、スープをこぼしたり、トングがうまく使えない、小さな皿にこぼれるくらい盛り付ける・・・そういったことも指摘し改善させます。

実際、これまで一緒に仕事をした監督やフロントからは、栄養の知識だけでなく、選手が社会にでてもはずかしくないように食事マナーも指導するようにいわれてきました。
あるプロの下部組織であるユースチームは、毎年海外に研修に行くのですが、その前に行っている講習会では、栄養の知識以外にテーブルマナーについてもお話します。
スープの飲み方、パスタの食べ方・・・小さいことですが、そのチームの指導者は講習会で実際に選手と食事をしながら、そういうことにも目を配っています。

またキャンプは「身体作り」以外に、選手・スタッフがコミュニケーションをとるのに良い時期。
一年を戦うための「チーム」がトレーニングでもそうですが、食事でコミュニケーションをとることができ、その食事という時間がいかに大きく関わって大切かはわかると思います。
ですから「栄養、栄養」と食事の都度選手にストレスをかけないように、自然に指導していくことにも注意しています。

とにかくキャンプ中は必要な栄養素をとらせる、知識を与える、栄養に興味をもたせる、食事にストレスをかけない・・・などということに注意しながら、指導を行っています。

食事でストレスをかけない指導をすることは、サポートする上でとても大事だと思います。
選手によってどこまで指導されるとストレスを感じるかは違います。また同じことを言われてストレスを感じる日もあればそうでない場合もあったり、人間ですから毎日違います。それを見極めることは大変です。でもだからといって、指導を遠慮ばかりしていられません。
うまく選手同士に食事に対しても競争意識をもたせるようにしたり、食事メニューから会話を盛り上げていくこともあります。
食事チェックをしていたときのこと。
私が言う前に「お前はカルシウムが足りないからイライラするんじゃないの?牛乳飲んだほうがいいよ!」とか「疲れてるんなら豚肉とれ!」とか、選手が選手に話しているのです(笑)
こうなってくれば、自然と選手の食事に対する意識も高くなり、指導しやすい環境になってきます。


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